整体院M&A実務ハンドブック

整体院・整骨院の事業承継やM&Aを検討するオーナー向けに、売却相場、高く売るための磨き上げ手法、具体的な手続きの流れ、隠れ負債などの注意点を網羅的に解説する専門情報サイト。

整体院M&Aの全体スケジュール(3ヶ月〜1年)

整体院M&Aの具体的な手順とスケジュール


整体院のM&Aは、思い立ってすぐ成立するものではなく、複数の工程を踏みます。一般的に、意思決定から成立(クロージング)までは3カ月〜1年以上かかると考えておくとよいでしょう。


全体の流れは次のとおりです。各工程で何が行われるかを把握しておくと、準備の抜け漏れを防げます。


工程主な内容期間の目安
①意思決定・磨き上げ承継方針の決定、院の体制・数値の整備数カ月〜数年
②アドバイザー選定仲介会社・プラットフォームの選定、契約〜1カ月
③マッチングノンネームシート作成、買い手候補への打診1〜3カ月
④トップ面談売り手・買い手の経営者同士の面談随時
⑤基本合意価格・条件の大枠合意(独占交渉権など)〜1カ月
⑥デューデリジェンス(DD)買い手による財務・法務・事業の精査1〜2カ月
⑦最終契約・クロージング最終条件の確定、契約締結、決済〜1カ月
⑧PMI経営統合、スタッフ・患者の引き継ぎ成立後〜数カ月以上
序盤で重要になるのが「ノンネームシート」の存在です。これは、院が特定されない範囲で、地域・売上規模・特徴などを匿名で記載した初期打診用の資料を指します。院名を伏せたまま買い手の関心を測れるため、情報漏洩を防ぎながら相手を探せます。

中盤の山場はトップ面談とデューデリジェンスです。トップ面談では、数字に表れない院の雰囲気や理念、オーナーの人柄が評価されます。デューデリジェンスでは決算書や契約書、レセプトなどが精査されるため、ここで初めて慌てないよう、前段の磨き上げで資料を整えておくことが肝心です。


買い手の実態と相手探し(マッチング)のコツ


整体院の買い手は、規模拡大を狙う同業チェーンだけではありません。近年は異業種からの参入も増えており、相手の目的を理解することが、納得のいくマッチングの近道になります。


特に注目すべきは介護事業者の動きです。コーポレート・アドバイザーズM&Aなどの情報によれば、デイサービス等を運営する介護事業者が、高齢者向けの機能訓練ノウハウ獲得やシナジーを目的に整体院・整骨院を買収するケースが増えています。施術スタッフの専門性が、機能訓練型サービスと親和性が高いためです。


主な買い手の属性と狙い


買い手タイプ主な狙い相性が良い売り手
同業の多店舗チェーンエリア拡大、店舗網の補完立地が良い/ブランドのある院
介護事業者機能訓練ノウハウ・人材の獲得有資格スタッフが定着した院
個人(独立希望者)開業リスクの低減、即戦力の院取得個人経営・居抜き可能な小規模院
異業種・投資目的新規事業、収益基盤の獲得自費中心で収益が安定した院

マッチングを成功させるコツ


  • 相手の目的に自院の強みを合わせて伝える:エリア拡大狙いなら立地、ノウハウ狙いならスタッフの技術、というように訴求点を変える。
  • 匿名段階での見せ方を工夫する:ノンネームシートで「自費比率」「リピート率」など数値の魅力を端的に示す。
  • 複数の買い手と並行して検討する:1社に絞り込みすぎず、条件と相性を比較する。
  • プラットフォームと仲介を使い分ける:小規模なら事業承継・M&Aプラットフォーム、複雑な案件は仲介会社、という選択肢がある。
個人経営の小規模院でも、TRANBI(https://www.tranbi.com/)やBATONZ(https://batonz.jp/)といった事業承継・M&Aプラットフォームでは、1店舗のみの譲渡や居抜き譲渡の成約例が多数あります。「小さいから売れない」と諦める前に、まずは市場での見られ方を確認してみるとよいでしょう。

デューデリジェンス(DD)で必ず確認される項目


デューデリジェンス(DD)とは、基本合意後に買い手が行う、売り手の詳細な調査です。財務・法務・ビジネスなど多面的に精査され、ここで問題が見つかると、譲渡価格の減額や破談につながります


整体院・整骨院のDDでは、業界特有のチェックポイントがあります。代表的なものを押さえ、事前に是正しておくことが、交渉を有利に進める鍵です。


調査領域主なチェック項目想定されるリスク
財務売上・利益の実態、未消化回数券(前受金)の有無隠れ負債による価格減額
法務賃貸借・リース契約、許認可・届出の適正性契約の引き継ぎ不可・違約金
労務雇用契約、未払い残業、社会保険の加入状況簿外債務の発覚
保険請求レセプト(療養費)請求の適正性過去の不正請求・返還リスク
広告・法令あはき法・景表法に抵触する誇大広告の有無コンプライアンス違反の指摘
事業顧客の定着率、オーナー依存度、スタッフの定着引き継ぎ後の売上下落懸念
特に整体院・整骨院で問題になりやすいのが、未消化の回数券広告表現です。前者は会計上の負債(前受金)にあたり、後者はあはき法や景品表示法に抵触する誇大広告がないかが厳しく見られます。これらは次章の失敗事例とあわせて、具体的な対処を理解しておきましょう。
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